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SAROMAN BLUE 鈴木健司

SAROMAN BLUE 鈴木健司

13サロマ湖100kmマラソン完走記~第1章~

今年第28回を迎えるサロマ湖100キロウルトラマラソン。僕の出場は21回目となった。完走回数は17回、ここ10年はリタイアなく連続完走をしている。今年は2月からヘルニアからくる挫骨神経痛に悩まされ、6月ランの練習回数は2回。それぞれ走りだしても50メートルで違和感を感じていたので、15分程度のお散歩ランしか出来なかった。5月には野辺山をクリア出来ていたので、それだけが唯一の安心感だった。野辺山は制限時間14時間で高低差は厳しいが、走れるところもあり、歩けるところもある。

しかしサロマ湖は歩いていては間に合わない80キロ10時間という厳しい壁がランナーの前に立ちふさがる。この壁をいかに突破するかは前半の貯金にある!5キロごとにラップタイムとにらめっこしながら、35分よりも速いタイムで走らなければならない。50キロ5時間50分に対してどれだけ貯金を貯められるかが完走への分岐点だ。

そしてほとんど走らずに向かえた北海道入り前日には、アートスポーツ日比谷店のスタッフからの応援アイテムや、家族からのエールを貰い『必ず完走!』を約束し羽田空港を飛び立った。

土曜日は羽田空港を朝7時に出発し女満別空港入り。その後ワッカ原生花園を散策した。この時の気温は14℃。風は冷たく吹いていたが、エゾスカシユリなど花の数は多いように感じた。その後はランチを食べて湧別の受付へ。今年は16名の大所帯だったが、午後から北海道入りするメンバーのナンバカードを引き換えて宿に向かった。
湧別町前日.jpg

明日の天気予報は晴れ!最高気温27℃とかなりの暑さが予想された。昨年の涼しさとは一転厳しい暑いサロマ湖がやってきた!

当日は朝2時起床!お弁当を頂き3時間10分の出発に備える。サロマ湖の日の出は早く、空は明るくなり始めてきた。空には雲一つない青空が広がり、レースの厳しさを予感した。

4時前に会場に到着しスペシャルドリンクを預ける。『30キロ:アセロラ・63キロ:グレープフルーツ・79キロ:アセロラ』それぞれのプロテインとショッツをケースに入れて渡していく。トイレ小は室内のトイレの長い列の脇を抜けて行くと誰も並んでいなかった。昨日からこれでもか!という量のご飯を食べたが、お腹は快調なようだ。

スタート20分前を目安にサロマンブルーメンバー控え室に荷物を置きに行く。1人で歩いていると皆さんが見つけてくれるのでご挨拶に。パワーをたくさん貰います!スタートゲート近くまで行く間に20人くらいとお話した。

サロマンブルーメンバーと陸連登録者は前方のブロックから走れるが、そのほぼ最後尾でスタートを待つ。

スタイリング.jpg今回のスタイリングはこうだ!頭から記していこう。頭には定番となって早くも11年目を迎えたニコちゃんバンダナ。そしてアンダーシャツにはクラフトノースリーブを着てから、アウターはこちらは2年目のアディダスをチョイス!やっぱり目立たないと!
タイツにはCEPコンプレッションハーフタイツを履いているが、インナーにはアシックスコアバランスタイツを重ねている。そしてCEPカーフソックスとシューズはブルックスのピュアフロー2で固めた。
野辺山からの変更点は、アシックスの肩バランスシャツを着ないでクラフトにしたことくらいだった。暑くなる天気予報から姿勢よりも快適性を求めた。

そして54キロにはクラフトロングスリーブ・ファイントラック・モンベルジャケット・タオル・サプリメント後半用をセットしておいた。

午前5時!快晴の下、スタートの号砲が鳴る!参加者は100キロで約3500名だ。

スタートゲートまで30秒。スムーズな流れに乗ってコースへと走りだした。湧別の町を1周回って戻ってくると5キロになるが、まずは体調を確かめるための調整区間だ。キロ表示も1キロごとにあるため、スタートラインまでの時間やペースを確認するにも必要だ。

たくさんのランナーが僕のことを抜かしていくのが例年の流れ!今年はそんな方々を写真に収めよう!と決めてデジカメ片手に走り続けた。一体4000人中何人と知り合いだったり、ブログを観てくださっているのか?カウンターを叩くよりはこの方が簡単だ!顔と名前も後から振り返りやすい!
(完走記本文には一部を添付します。それ以外の写真は2013サロマ湖写真集を御覧ください。)

カラダはどうか?6月の走行時間は30分程度。ロングの練習(ゆっくり長く・ながらラン)が出来ていないので、自然とペースが上がっている気がする。抑えて抑えてと心拍数を気にしながら走る。ゆっくり走ると腰が落ち、腰を入れると速くなる。走り込みが出来ていないと、後者で走るには筋力不足だ。まずは5キロまで様子をみよう。脚・心拍に負担がなければこのまま行けば良い!

ここサロマ湖では前からスタートしているので、速い方にも後ろから見つけて頂ける。このサロマ湖でしか会えない方もいるので、ガッチリ握手を交わして見送ったり、いつものように『ブログ観てます!』『またギリギリですか?』の声が飛び交う。ここ10年で12時間55分以内でゴールしたのは1度だけ!それだけに皆さん知って頂いているが、『あれはわざとだ!速く走ったら9時間台でゴール出来るのに、余裕で2分前に帰ってくる疑惑!』を持っている方もたくさんいる(笑)。それはそれで速いランナーだなんて見えるのは嬉しいが、実際問題練習できていません(大汗)。サブ10なんて無理無理!フルマラソンだってキロ5分で突っ込んだら27キロで脚がパタッと止まるのは目に見えていますよ。それくらい自分に自信がないので、体力を100%使いきってゴールするのが『アート鈴木スタイル』です!
スタート周回.jpg

グルッと回りスタートの湧別総合体育館前を通過して、いよいよ竜宮台に向けた1本道に入る。

5キロ 30分50秒

おっと速いなぁ。スタートラインまで30秒を差し引くと30分20秒。やはり走り込めていない分、いつものペースが速いのかな?とりあえずはこのままで行くことを決めて、写真を増やせばゆっくりになるだろうと片手にデジカメ(オリンパス)を握った。そしてもう片方の手には、ショッツの入ったフラスクを持ってエネルギーを注入した!両手が塞がっては困るので、フラスクをしまい左手にデジカメ走行を続けてバシバシ撮った。



5キロを過ぎてから陽射しを正面から受ける形となり眩しい!次の5キロは遠くに見える林が目印に。センターラインに位置取り、一番高い場所になるので皆さんからの目印には調度良い!すると後ろからいちご達がやって来た!今年は3粒のいちごメンバーが参戦!初出場のイトーさんは持ち前の明るさが周りを和ませてくれる!そして今年で5回目になる有美さんは前日蜂に刺されるトラブルに逢うものの、快調な様子だ!そして有美さんと並走するのはクリニックでもたまに登場する安田さん!54キロで過去に1時間も休んでしまうなど、マイペースな安田さん。今回も途中でリズムを崩さないでくださいね!
いちご3粒.jpg

3粒目のいちごのスギ様はこのところ急成長!くびき野・大江戸・しまなみ・サロマ湖と徐々にパワーアップ!落とした体重と前半抑えて脚を残す作戦で11時間台を狙います!しかも脱タイツスタイルで短パンとCEPで頑張っています!

10キロ 1時間01分32秒 30分42秒

自分の中では飛ばしていない。心拍数も問題ない。エイドをパスしながらショッツを補給しペースを守る。貯金は9分にもなった。トイレ小のタイミングを探るがまだ良い場所がない。サロマ湖を右に見ながらレイクパレスや駐車場のトイレを透り過ぎる。
いつもよりも並んでいない印象があるが、自分が前よりな位置にいるからかな?12.5キロの被り水からウエストに付けていたバンダナを濡らして首に通した。ここのトイレは帰り道に空いている。今も少ない人数だが、とりあえずパス。15キロを目指した。15キロ手前のエイドではさすがに暑くなってきたのと、15キロごとのアミノダイレクト5500を流し込む。

15キロ 1時間33分35秒 32分02秒

補給時間を含みこのタイム。走るペースは徐々に落ち着いてきた様子。6分10秒前後かな。17.5キロの被り水でバンダナをまたまた濡らしてタイツやCEPを冷やす。併設されたトイレへGO!ここでは4つのトイレに2人だったので、迷わず立ち寄った。

15キロのトイレでは小を済ませるのに1分程度ですぐにレースに復帰した。大きい方はまだまだという感じで再び元のペースに戻して走り出した。

折り返しのランナーが増えてきてもこの区間は逆光になってしまうので写真は撮らずに走る。追い越していくランナーは別だけど。

トップランナーやエリックワイナイナなど尋常でないスピードですれ違う。その中からお客さんを見つけてはハイタッチでエールを交わす。たくさんの笑顔が行き交う竜宮台の折り返し。思ったよりも前にいる人、後ろにいる人それぞれがマイペースでレースを進めている。折り返してから1人のランナーを探していた。それは大会オフィシャルイベントでお会いしていた大久保さんだ。6年前に癌を発症し治療に専念。ここでは簡単には書けない程の苦しい闘病生活の末、このサロマ湖に戻ってきた。ひたむきにゴールに向けて走る足取りは確実にゴールへと歩を進めていた。

20キロ 2時間08分41秒 35分05秒

トイレ休憩もあったのでこのタイムは許容範囲内だった。大久保さんに声を掛けてから再びトイレタイムを欲してきたので、先程と同じトイレへ向かう。

やはりこのトイレは空いているようだ!1人待ちで済んだ。しかしトイレが理由だけで止まったのではなかった。それは腰の違和感だった。折り返してから異様に抜かれている感じがあった。自分のペースは変わっていないはずなのに、引き離されて行くようだった。

トイレは大して時間を取らずにクリアして走り出すが、先程の違和感は変わらなかった。

0-20.jpg
心拍計が安定しておらず出足はガタガタです。5-10kmの区間はトイレ休憩もあり。
縦線は5kmごとのラップです。


またしばらくして嫌な感じがあり、悪夢の富士五湖を彷彿させる違和感になってきた。ここは早めの対処が必要と、被り水エイドを使い脚を冷やした。更にポーチから『魔法のクリーム?ホディライトクリーム』を取り出して右のお尻付近に塗り込んだ。エイドで2分くらい掛けてマッサージしていると続々とクリニックに参加の皆さんがやって来て『大丈夫ですか?こんなところで追い付く予定ではなかったのに!』と声を掛けて頂く。『大丈夫です!』と応えたが、状況はあまり良くない。

25キロへ向けてオレンジカラーのYさんの背中を追い掛けるが、頑張って走っても小さくなって行くばかりだ。陽射しを背中から受けて走るランナーの列は、日陰を追って道路の左右に片寄っていく。

25キロ 2時間46分59秒 38分17秒

先程の20キロでは貯金が12分くらいあったので、この区間での3分は問題ない。しかしこのまま下降線を辿るラップでは先が心配だ。なんとか35分は死守しようと無理矢理ペースを上げた。コースは竜宮台の一本道を終えて分岐点を抜ける。再び真っ直ぐな直線道路になり、背中からの追い風も受けているので余計に暑く感じる。この後国道に出れば向かい風となりヒンヤリと感じられる。

ペースを維持しようとしているので心拍数が上がってきてしまう。ガス欠を避けるためにもフラスクのショッツは欠かさず摂取しているので、残りはあと1本分になっていた。次に30キロのスペシャルドリンクで更なる回復を願った。
30km.jpg


スペシャルドリンクの数は例年よりも増えている。ボランティアの学生が『スペシャルドリンクある人~!』と大声で叫び、伝言ゲームで用意してくれた。受け取り後はテーブルを借りて水の中にアクアプロテインアセロラ味。それからショッツワイルドベリーを2本投入してシェイクした。飲み終わりゴミ箱を見るとなんだか同じシェイカーがあったのを見つけてにやけてしまった。並走していたお客さんからも『スペシャルドリンク、あれめっちゃウマイですね!時間も掛かるけど(笑)』と
お褒めの言葉を頂いた。

スペシャル.jpg


30キロ 3時間22分42秒 35分43秒

スペシャルドリンクを作りながらもここは35分で収まった。いや、収めたといっても良いだろう。約8分の貯金がある。とりあえずは十分な時間だ。いつもと変わらない通過時間だが、この後に絶対にツケが回ってくる。ここからは更に粘らなくてはならない。

国道に出ると正面から強い陽射しを受けて、下からの照り返しも眩しい。35キロまでは緩やかではあるが登っている。また前にいる人からも置いていかれる状態だ。風だけは前から吹いてくれているのが唯一の救いだ。オーバーヒートせずに走ることができる。

35キロ 3時間59分26秒 36分43秒

Mさん.jpg下り始める35キロの距離表示を抜けていくと、その先にはトイレがある。まだ行きたくないが、次は混んでるかな?どうだろうと思っているうちに通り過ぎた。そして芭露という町まで国道を更に進む。被り水エイドではシャワーのように水を飛ばしてランナーを冷やしている。僕は頭のバンダナを濡らし、更に
2つ目のバンダナを濡らして首にも着けて走り出した。ここでクリニック参加のMさんを見つけて声を掛ける。


次の大きなエイドとなる芭露は40キロ手前。被り水をしながら、フラスクのショッツを流し込みガス欠に対応する。下り基調になり始めてからは走れたが、少し走っては歩くの繰り返しが増えてきた。

そして芭露に到着。ここではスイカを食べてバナナを貰い、バンダナを濡らし、ふくらはぎを冷やして歩き始めた。橋を渡り200メートル位進むと40キロだ。

40キロ 4時間40分58秒 41分31秒

おっとまずい!8分あった貯金がなくなった。歩いている時間が増えているので仕方がない部分だが、40キロでラップが40分というのも問題だ。この後は月見が浜を抜けると50キロまでに山ご1つある。ここでのペースダウンを考えると50キロは当然5時間50分では通過できない。なんとか40分ずつでクリアして6時間での通過を死守しなければ!

とりあえずはこのままのリズムで行こう!無理して上げても仕方がない。平坦が続くので、先程のラップよりは速く刻めるはずだ。

20-40.jpg
20-40kmの心拍数はかなり安定している。150まで上がっているのは無理している証拠。
35kmの落ち込みは心拍数からも歩いているのが分かる。


月見が浜に向けて国道を離れ、サロマ湖の湖畔に出る。しかし走り続けることが出来ずに歩き始めてしまう。知り合いの方にも『歩いている場合じゃないよ!』と促され、脚を進める。時計を確認しながらフルマラソンの通過を計算する。

42.195キロ 4時間58分00秒

あと8キロを60分で走れば良いことを確認!キロ7分プラスαでなんとかカバーしよう。
フルマラソン.jpg


ここでサロマ湖チャレンジメンバーの方々が気になった。このペースでまだ抜かれていないということは、ず~とキロ7分で来ているのかな?そろそろ抜かれるタイミングかな?と思っているとかなり軽快な走りをした衣笠コーチとWさんとMさんが一気に抜いていった!『速いなあ!』置いていかれまいと、背中を追い掛けるが3人の姿は小さくなるばかり。被り水で追い付いたが国道に戻ってからは更に引き離された。

なんとか45キロ手前のエイドまで辿り着き、カラダを冷やす。次のエイドは51キロ過ぎまでない。ここはしっかりと補給しなければと、ショッツのカプチーノをダイレクトで1本流し込んだ!これから始まる丘陵地帯に向けて走らなければならない。ペースを意識しすぎて補給が疎かになっては、後で泣きを見てしまう。

45キロ  5時間20分14秒   39分16秒

エイドを離れると湖畔を離れて、内陸部に差し掛かる。強い陽射しと共に下からの照り返しも強く感じる。風だけは通ってくれていたので、それだけが救いだった。

湧別町から佐呂間町へ抜ける丘陵地帯。大きなカーブを描きながらランナーの列が山間に消えていく。いよいよ坂の始まりに差し掛かると、スポーツライターの夜久弘さんの姿が!僕と夜久さんは暑いサロマ湖は大の苦手。過去2000年と2001年の30℃を越える暑さの中揃ってリタイアしていた。歩きにも力のない夜久さんに『まだ大丈夫ですよ!5キロ40分で刻めば間に合いますから!来てくださいね!』『脚が動かないんだよ。』

僕は既に『電柱走り』だった。道路脇を示す雪国ならではの表示を目印に、走りと歩きを繰り返した。赤と白のシマシマ模様が目印。5メートル手前まで走り、シマシマの下から走り出す。歩く距離を長くしてしまうとキロ7分では走れない。休憩の為のエイドでは休まないと走れないので、キロ7分では刻みたかった。後ろを振り返っても夜久さんの姿は小さくなるばかり。自分のリズムで行くしかない。
比較的この上り坂は長く、今まで平坦だった道だけによりきつく感じる。それでも登り切れば下り坂が待っている。走り続けられる下りになれば、再び貯金が可能だ!何としてでも50キロを6時間以内。そしてこの区間のラップを40分以内でクリアしたい。

50k.jpg佐呂間町に入りいよいよ下り坂だ。1キロ近く続いた下りの先に被り水と平坦があってようやく50キロだ。ここでは以前フジテレビのとくダネで湧別中学校の生徒さんから頂いた四つ葉のクローバー繋がりの45さんと並走となった。『次の被り水ありますかね?暑いといつもないですよね。』レース中にすれ違い以外でお会いするのは初めて!ようやく会話ができました!

被り水はなんとか使えたものの、まずは50キロだ。再び始まる登り坂に50キロの計測ポイントがある。

50キロ 5時間59分48秒 39分34秒

よし!なんとか6時間以内で来た!次は65キロで8時間だ。<4キロのエイドはどうする?ラップタイムが39分で刻めているので、2分は貯金できる!2分だけ休もう!と決めた。

登り坂に差し掛かってもまた走っては歩くの繰り返しで、坂道をクリアしていく。ここからは1キロ表示にもなってくるので、キロ何分で刻めているかをしっかりと確認できる。下りに差し掛かり出てきた51キロでは9分を経過していた。これは許容範囲!この先53キロまでは平坦になるからキロ7分では行けるはずだ。

52キロ手前のエイドに到着。ここでは15キロ毎と決めていたアミノダイレクト5500を摂り忘れていたので流し込む。更にバナナを貰い歩き出した。食べることに抵抗はない。気持ち悪くもならず、パワーに繋げていくことが出来ている。

食べ終わってから走り出すと、湖畔からの風がまた気持ち良い。サロマ湖も正に『サロマンブルー』に輝いていた。あと2キロ!54キロのグランディアサロマ湖を目指して走る。腰を立てて走ると右の太もも裏にビリッと電気が走るような痛みだ。腰が落ちているのが自分でもわかるが違和感が少ないのがこの形だった。

前後を行き来するランナーのSさんと喋りながら進む。お互いに腰が痛い状態で、さんはドンドンと強く腰を叩く仕草が目につく。『ギリギリですね。でもこのペースを守れれば、なんとかなりますよ!頑張りましょう!』53キロからまた坂を登り、一旦下って更に登りを登った先に54キロとグランディアサロマ湖が見えてくる。

大久保さん.jpg信号を渡り登り始めて歩き出すと長身のランナーがスーッと抜いていった。あっあれは!思わず追い掛けて声を掛けた。『大久保さん!』『目標としていた54キロまで来れました。鈴木さんがいれば安心ですね。』『いやでもギリギリで、キツイですね。』『鈴木さんはエイドで何分休むんですか?』『僕は2分です!』『えっ!?2分ですか?』と驚いた反応だった。そこで『大久保さんのラップはどのくらいで刻んでます?僕は39分でしか走れないので、貯金が欲しいんです!』『36分位です・・・。』『それならば大丈夫です!5キロ毎を、休憩を入れながら40分以内で刻んでください。マイペースで!』と、僕は先を急いだ。

54キロ到着のラップ経過時間は30分を示していた。32分で出発だ。チームへろへろの方にも『健司くん、ゆきちゃんを頼んだよ!』と言われ後半に臨む。

到着と同時に荷物を受け取る前にバンダナを外し、Tシャツを脱いでクラフトのアンダー1枚になる。荷物を受け取り一目散に水を受け取り、出口方向へ移動した。

すぐに荷物を置き、クラフトのアンダーを脱いでファイントラックに着替え、再びTシャツを着る。次にポーチの中から空のフラスクを取り出し後半用にショッツカプチーノに差し替えた。更にポーチの隙間にはアミノダイレクト5500やハニースティンガーグミ等を詰め込んで、荷物は終了だ。アームウォーマーは前半からのメッセージ付きを引き続き引っ掛けて走る。

2分が経過し荷物を係りの方に預けいざスタート!出口に氷のプールがあったので、首に着けたバンダナの中に氷を詰め込んで出発した。この時点で3分30秒経過。54キロエイドを後にした。すぐの登りは走って登る。55キロにある仮設トイレに寄る為だ。

55キロ 6時間41分39秒 41分51秒

54キロで着替えて詰め替えて41分ならばOK!この先トイレに行く時間もなくなるので今のうちに済ませておく。ここには小用にトイレがあるので待ち時間はほとんどない。腰を気にしていたSさんも一緒だった。

ここから60キロまでは走れる坂道。と言ってもカラダの状態からすれば無理しなくてはいけないので、ひたすら電柱走りで繋いでいく。54キロではかなりのランナーが悠々と後半に向けての準備をしていたが、40分を辛うじて刻む僕はそうしていられなかった。なのでこのタイミングではかなりのランナーに抜かれていく。57.5キロの被り水でも頭のバンダナを濡らしてカラダを冷やしている間に、たくさんのランナーが声を掛けて抜いていった。

前を走っていたSさんのペースが上がらない。聞くと腰の痛みが肩にまでやって来たらしく、ガチガチに固まってしまったという。それならばと『ボディライトクリーム』を取り出し、歩きながら肩回りに塗ってあげた。少しでも楽になればと期待した。

58キロを過ぎると湖畔へ向けての下り坂。ここでようやく走る距離が延ばせる。リズム良くなだらかな下りを利用して走る。59キロから60キロはまた平坦だ。我慢して60キロ地点を目指した。
40-60.jpg
54kmエイド以降は確実に歩を進める為に歩きを多くした。その分65kmで予定よりも遅れることに。
しかしカラダを休ませることで回復させる意味合いもあり、ペースを維持していた場合の失敗も考えられる。


59km.jpg60キロ 7時間21分19秒 39分39秒

55キロ過ぎてからのトイレ休憩を含めてこのラップは良いのだが、通過時間が問題だ。7時間21分。約1分の遅れだ。そしてこの後でポイントとなるのは60キロエイドと64キロ手前のエイドだ。55キロからはエイドが被り水しかないから、39分で刻めた。しかしここの区間は休む誘惑がいっぱい!如何にこのエイドでの時間を少なく抑えるかだ。

とにかくエネルギー切れは困るので、ショッツとグミとアミノダイレクト5500を1本流し込んだ。またここで先行していたチャレンジメンバーの衣笠コーチとWさん達が後ろから現れた。45キロでは置いていかれてしまったが、54キロの休憩時間の差で僕が前に出た形だった。『コーチのペースは凄く良いですから頑張って着いて行ってくださいね!80キロ抜けられますよ!』と伝えると、苦しい表情だったがしっかりと走って前を行った。

ここから1キロは平坦だが、キムアネップに向けては一旦登り、そこから緩やかに下って行く。ここが僕にとっての正念場だ。昨年もハンガーノックを起こして大失速した場所だ。引き続き電柱走りを駆使して登りを進む。クリニック参加の方とも『ギリギリですね~。』と話ながらキムアネップへ向けて左にコーナーを曲がる。

北海道らしい風景の中を涼しい風を受けながら下り続ける。途中に被り水があるが、ほとんど空の状態だった。

下り切ると約1キロをグルッと回る感じで対角側にエイドのテントが見える。遥か彼方に感じるのもこの距離を走ってきているからだ。途中、草むらの斜面に倒れ込むランナーが見えた!明らかに倒れ方がおかしかったので、近づいて見ると少し奥に向かって傾斜している所で立てずにいるランナーがいた。『大丈夫ですか?引っ張ります?』『お尻が上がらないから腕だけ貸して!』とグッと引っ張った!僕も脚が吊りそうになったが、無事コースに復帰。『気をつけてくださいね!』と、先を急いだ。

魔女の森.jpg63キロの看板を抜けてようやくエイドステーション。ここにはスペシャルも用意してあった。しかし時計を見ると『7時間55分』を刻んでいた。あと5分で8時間。それには間に合わない。5キロ40分よりも早く走らなければ、7キロはクリア出来ても80キロがアウトになる。とりあえずスペシャルドリンクはプロテインだけを溶かして飲み干した。ショッツはポーチの中にしまった。

一緒に来ていたSさんには、『間に合わないので行きます!』と伝えてペースを上げた。左に曲がると64キロ、そして魔女の森が始まる。64キロ通過タイムは7時間58分。こうなるとただがむしゃらにペースを上げるだけだが、キロ6分くらいでは走れている。呼吸が上がりすぎないように走っていると前に見えてきたのは大久保さんだ。

いつの間にか抜かされていた!僕はペースを維持しながら大久保さんに追い付き、並走した。『ラップはどのくらいですか?』と僕から問い掛けた。『36、7分です。』『ギリギリですね~。僕はまた休みますから貯金を作る為にこのペースですけど、速過ぎたら無理して着いてこなくて大丈夫ですよ!マイペースで!』魔女森を抜けるまで女性の方と3人で並走する。

65キロ  8時間04分27秒 
43分08秒


距離表示を見るとやはりキロ6分だ。走りながらこの後のエイドの使い方をアドバイス。『65キロは5キロを40分で行くには4分くらい遅れているので、頑張りましょう!この先私設エイドと被り水と斉藤商店と69キロにエイドがありますから、全部立ち寄っていると時間がなくなってしまうので、気を付けてください。70キロ過ぎても72.5の被り水までないので我慢しなくてはなりませんが。』『少し落として行きます!』と大久保さんはペースを抑えた。僕には貯金が必要なのでキロ6分を維持しながら67キロを目指した。


13サロマ湖100kmマラソン完走記~第2章~


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